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歴史・文化財 資料アーカイブ

宇都宮にまつわる民話

成高寺

 むかし、成高寺は、女の人が寺の中に入ることはできませんでした。そのため、寺の仕事は男の人がすべて行っていました。新左衛門というじいやと和尚が2人で暮らしていたころのできごとです。
 ある時、和尚が檀家(だんか)の法事で出かけて帰ってくると、いつも出迎えてくれるじいやが見あたりません。
 あちこち探しまわると、竹やぶの中から大きないびきが聞こえてきました。不思議に思って近づいてみると、大きな狐がじいやの着物を着て昼寝をしていたのです。  和尚は、夕方にじいやを呼び、「じいや、お前は、寺のため、また私のために、大変よく働いてくれた。しかし、今日じいやの正体を見てしまった。今日を最後にこの寺を出て行ってくれないだろうか。」と言いました。
 すると、狐は驚いて涙を流しながら「今後は,絶対に正体を見せるようなことはいたしません。このお寺に仕えてから、私は楽しい思い出でいっぱいです。どうか、今まで以上にいっしょうけんめい働きますので、これからもずっと置いてください。」と頼みました。
 和尚は、狐のことがかわいそうになり、「それならば、今言ったことを書いて出しなさい。」と言って証文を書かせました。狐の新左衛門は、死ぬまで寺のため、和尚のためによく働きました。
 そのときに書かせた証文は、今でも成高寺に残されています。