歴史・文化財 資料アーカイブ
宇都宮にまつわる民話
朝日観音霊験
江戸時代のなかごろ、二荒山神社に近い鏡ヶ池のほとりに、貧しいけれどとても仲の良い夫婦が住んでいました。この夫婦は、子どもをさずかることを願い、毎朝、朝日観音にお参りすることを日課としていました。
願いがかなってやっと男の子が授かり、ふたりはたいへん喜びました。しかし、子どもが生まれて間もなく、母親は病気で亡くなってしまいました。父親は深く悲しみ、近所の人たちも声もかけられないようなありさまでした。
父親は、朝に夕に朝日観音に子どもが無事に育つようにと祈りました。子どもはお腹がすくとお乳を求めて泣きました。昼間は近所の人の乳をわけてもらいましたが、夜中はどうしようもありません。
父親はわが子をかわいそうに思い、無理を承知で自分の乳をふくませてみました。すると、不思議にも母親のようにお乳を出し、子どものおなかを満たすことができたのです。そして、無事に心のやさしい元気な子どもに成長したそうです。