歴史・文化財 資料アーカイブ
宇都宮の民話
宇都宮の民話「釣り天井」
むかしむかし、宇都宮の近くの村に、与五郎という若くて腕のいい大工がおって、庄屋の娘お稲の婿に決まったんだと。ある時、将軍様が東照宮にお参りするため、宇都宮に泊まることになったと。腕のいい大工が部屋を造ることになり、与五郎も選ばれ、特に腕のいい十人が湯殿を造ることになり、与五郎もその中に入ったと。
ところがある日、仲間の留吉から恐ろしい話を聞かされたと。
「湯殿の天井に、石を仕掛けて将軍様を亡き者にし、弟君を将軍にするそうだ。」
与四郎は、その夜こっそりお城を抜け出してお稲に会うと、
「ここに釣り天井の絵図面がある。俺が来たことは誰にも話しちゃなんねえ。」
と言うと、お城に駆け戻ったと。ところが、与五郎はその場で首をはねられ、残りの大工も湯殿ができるとことごとく斬られてしまったと。その噂がお稲の耳にも入り、嘆き悲しみ、手紙と絵図面を残して井戸に身を投げてしまったと。
庄屋は悲しみと怒りで、雀宮で将軍様の行列に直訴すると、将軍一行は江戸に引き返されたと。宇都宮のお城はすぐ調べられ、釣り天井の仕掛けや大工たちのなきがらも見つかったと。宇都宮城主本多上野介正純は城を取り上げられて、今の秋田県の由利に押し込めてしまったと。
※この話は、徳川幕府二代将軍秀忠が、日光参拝の折、宇都宮城に泊まる予定を変更して江戸に帰ったということと、その直後に宇都宮城主本多上野介正純が失脚し、横手(秋田県)に流刑になったことから作られたといわれています。また、将軍は秀忠でなく家光として語り伝えられた話が多いようです。