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歴史・文化財 資料アーカイブ

宇都宮の民話

宇都宮の民話「孝子桜」

 1月から、季節の年中行事を紹介しています。年中行事とは、家ごとに毎年繰り返し行われる祭りです。正月と盆に行われる行事は、年の初めあるいは季節の初めにあたって先祖の霊を迎える祭りであり、春と秋に行われる行事は農作物の豊作を祈り、感謝する祭りです。
4月は、各地で花見が盛んに行われます。奈良時代の貴族の行事が起源と言われている花見は、ここで言う年中行事とは少し違いますが、日本人の季節感を形成する重要な風物となっています。
城山西小学校の校庭には、市指定天然記念物で、毎年多くの見学者が訪れる、しだれ桜がありますが、この桜にまつわる伝説を紹介します。

 むかし むかし、古賀志山のふもとに、お父を看病しながら、畑や山仕事をしていた幸助という息子がいたと。寝たきりのお父が、桜が見たいというので、木の下に来ては、
「おねげいだ。一日でいいから、桜の花を咲かせてくだされ。」
と、寒い冬の日なのに、毎日祈り続けていたと。ある晩のことお父は、
「すまんな幸助、最後の願いだ。明日、桜の下に連れてってくれ。」
と頼んだと。
 幸助は、月明かりを頼りに古賀志の大日如来様の祠に走り、祈り続けたと。
 その日、幸助がお父を背負って、林を抜けると、満開の桜が目の前にあったと。
「お父つぁん、咲いたぞ。桜がさいたぞ。」
お父の目からは、涙がこぼれていたと。お父をゆっくりと下ろすと、二人で桜にむかって両手を合わせたと。お父は、そのまま眠るように息を引きとったと。
そのしだれ桜は「孝子桜」と呼ばれ、毎年美しい花を咲かせているそうだ。

(栃木の民話がたり「かまどの会」 会長 吉成 和子) ▽問合せ 文化課(632)2766