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歴史・文化財 資料アーカイブ

宇都宮の伝統工芸・伝統食

伝統食「芋串」

 里芋をゆでて串に刺し、ゆずみそなどのたれをつけてあぶったもので、一般には芋田楽といいますが、本県辺りでは芋串といいます。発音が悪いとイモムシと間違えるからご注意。
 里芋は、マレーシア辺りが原産のタロイモの一種といわれ、日本には、稲作以前の縄文時代に伝来・栽培されてきたともいわれています。水田など水分含有量の多い土質で日当たり良好、かつ温暖なところが栽培に適していますが、栽培適応範囲が広く火山灰台地や砂礫(されき)地などでも栽培されています。県内では宇都宮周辺の火山灰台地や那須扇状地・足尾山麓一帯の砂礫地などで栽培されています。
 稲作以前より栽培されてきた里芋は、その栽培の歴史を物語るように料理の方法をはじめ里芋にまつわる伝承にさまざまなものがあります。県内では、冠婚葬祭には決まって煮しめを作りますが、その主役は里芋です。足尾山麓一帯では、正月三が日に芋カン(オカン芋とも)と呼ばれる料理を作る風習があり、里芋とダイコン、ゴボウなどを入れ味付けせずに煮たもので、これを歳神に供え、その後しょうゆで味付けし餅を入れ雑煮にして食べます。また、正月に一家の主がいろり端でゆでた里芋を食べ、正月期間中は餅を食べないという変わった風習を伴った家もあります。
 県内には芋串を食べる所も多く、那須野が原の旧家筋では正月に、日光市山久保では春の稲荷社の祭りに芋串を食べる風習があります。
 市内の北西部山麓一帯では、ジャリッパタと呼ばれる礫(れき)の交じった畑が広がり、そこでは里芋が栽培されてきました。里芋の収獲時には、掘り出した新鮮な里芋で、芋串を作って食べたものです。特産のネギやユズを加えたみそだれをつけてあぶった芋串、独特の香りとホクホクの熱い里芋は、寒さを感じ始める晩秋にあって実に味わい深い食べ物です。